技術者として感じる、コインチェックの「熱」【CTO × CSO対談(前編)】
2022年8月1日付けで、コインチェックの執行役員CTO(最高技術責任者)に松岡剛志さん、執行役員CSO(最高戦略責任者)に山田尚史さんが就任しました。名だたる企業でCTOを務めた松岡さんと、自ら起業し複数の企業の取締役を務める山田さんの対談の様子をお届けします。
前編では、様々な経験を経たお二人に、暗号資産業界に感じる面白さと、コインチェックの魅力を語っていただきます。
━━まずはお二人の経歴と、現在のコインチェックでのミッションについて教えてください。
山田:
2022年4月からコインチェックに執行役員として入社し、8月1日付けで執行役員CSO(Chief Strategy Officer)に就任しました。大学卒業後に株式会社AppReSearch(現 株式会社PKSHA Technology)を設立し、2020年末まで技術担当役員を務めていました。2021年6月からはマネックスグループの社外取締役を務め、その後ご縁があってコインチェックにも執行役員として参加後、現在に至ります。機械学習やディープラーニングに関する技術的バックグラウンドを活かし、事業戦略をリードしていくことがミッションです。
松岡:
2022年8月にコインチェックに入社し、CTO(Chief Technology Officer)に就任しました。2001年にヤフー株式会社に新卒エンジニア一期生として入社しました。その後株式会社ミクシィでプログラマーとして働いたのち、マネジメントポジションとCTOを経験しました。2016年には株式会社レクターを創業し、代表取締役としてDXコンサルティングに携わってきました。コインチェックではCTOとして、経営課題を技術の力で解決できるよう尽力します。
━━お二人の技術的バックグラウンドについても教えてください。プログラミングに興味を持ったきっかけはなんですか?
山田:
SF作品に登場するAIの存在に憧れたことが原点です。東京大学在学中に、機械学習の権威である松尾豊先生の研究室で学びました。卒業後に創業した会社も、当時まだまだ新技術だったディープラーニングを社会実装することを旗印に掲げてビジネスを展開しており、「技術を使って新しいことを生み出す」ことに今も強い興味と関心を持っています。
松岡:
私は山田さんとは対照的に、大学時代はプログラミングにほとんど触れていませんでした。当時は阪神淡路大震災を経験し建築に興味を持って進学したものの、就職氷河期の煽りを受けゼネコンへの就職を断念しました。進路に悩みましたが、「クーラーの効いた部屋で働けて、伸びまくっている業界があるらしい! これからの時代はITだ!」と思い立ってヤフー株式会社に入社してからがプログラミング経験のスタートです(笑)。
山田:
松岡さんはもともと建築に興味があったんですね。ヤフーに入社してエンジニアになってから、建築業界への未練はなかったんですか?
松岡:
……あんまりなかったです(笑) 切り替えは早い方ですし、伸びている業界に身を置くということに楽しさを見出すことができたのだと思います。
━━なぜお二人はコインチェックへの入社を決めたのでしょうか。
松岡:
世の中には「波」があります。これから大波がやってくる、成長していく産業の中で働くというのはすごく面白いことなんです。Webポータルの黎明期にヤフー株式会社、ソーシャルの時代に株式会社ミクシィ、DXの隆盛で株式会社レクターの創業。私のキャリアは、世界に新たな流れをもたらす「波」に乗りながら変遷しています。コインチェックも今まさに、波に乗りもう一歩次のフェーズへ踏み出そうとしているところです。そこに惹かれて入社を決めました。
山田:
まさに、コインチェックは今、目に見える形で「波」に乗っていますよね。グループとして2022年中の米ナスダック市場へのDe-SPAC(*1)上場を予定している中で(*2022年8月現在)、その盛り上がりをマネックスの社外取締役という立場から見ていました。これからコインチェックは、日本発の暗号資産取引所を提供する企業としてグローバルに力をつけて知名度を持っていくことになります。親会社の一員として議論にも加わり、今後の展望に面白さや先進性を感じていたところ、クリプト・テクノロジー担当としてマネックスの執行役を拝命したことがきっかけで、コインチェックにも参加することになりました。
(*1) De-SPAC:株式新規公開されたSPAC(買収を目的に設立される会社)が、買収対象の会社と合併し、買収取引を完了すること。詳細はこちら
松岡:
波に乗っている会社には、お金も人も集まってきます。現にコインチェックには、創業者の和田さんがいて、マネックスの松本さんも執行役員に就任して、株式会社ミクシィでCTOを務めていた佐藤さんがいて、しかもそこに、山田さんもCSOとしていらっしゃる……こんなに多くの優秀な人たちに囲まれて働くことができるのは、波に乗っている企業で得られる楽しさの一つだと思います。
━━コインチェックは創業以来、暗号資産業界の最前線を走り続けるべく様々な挑戦をしています。お二人が思う、コインチェックやこの業界の魅力はなんですか?
山田:
暗号資産というものは本来、信頼できる情報の見極めが難しい領域だと言えます。例えば銀行にお金を預けるときに、ほとんどの人は預金が突如なくなってしまうリスクについて心配はしません。しかし、暗号資産の世界では「お財布に入れていたお金がある日突然なくなった」ということが発生し得ますし、そのとき権威ある何者かが助けてくれることはほぼありません。利用者は皆、なにを信頼してどこにお金を置いておくかという選択を自分でする必要があります。それが暗号資産の面白さでもある一方で、難しさでもあります。
ただ、私はブロックチェーンという技術を基に生まれた経済圏そのものに魅力を感じています。本来「信頼することも、利用することも難しいもの」を「簡単に、信頼できる」形で提供していることが、コインチェックの魅力なのです。日本の法律に則った法人として、暗号資産の世界と利用者を繋ぐことがコインチェックが提供しているサービスです。何を信用していいかわからない暗号資産の世界で、コインチェックを信頼してもらうことで、多くの人が「新しい価値交換を、もっと身近に」感じられるようになります。コインチェックは、ただ暗号資産を売買する場所を提供するだけでなく、暗号資産の信頼性を精査し、安全に行うための手段を提供しているゲートウェイとして、これからますます価値が大きくなっていくはずです。
松岡:
言語化するのが非常に難しいのですが、Web3を取り巻く環境には社会を変革するサービスやプロダクトが生まれそうな特有の熱量を感じています。それは体験しないとなかなか伝わらないものです。iPhone3Gが発表された時、私にはその良さが理解できませんでした。BlackBerryの焼き直しのような何かに見えてしまいました。しかし実際に自分の手で体験してみると、そこに無限の可能性を感じることができました。ブラウザウォレットの登場やトレーディングカードゲームとNFTの相性の良さなどが特にわかりやすいと思います。コインチェックはこれから大きな波を迎えるWeb3のエコシステムのなかで、ユーザーが最初にアクセスするサービスです。そしてコインチェック独自のエコシステムを拡大しつつあり、業界の熱の一翼を担っています。
━━お二人は今、コインチェックのCTO・CSOとして、新たな環境での挑戦をはじめられたところだと思います。エンジニアは、環境を変えるタイミングをどのように見極めるべきでしょうか?
松岡:
私は、需要と供給がこれから崩れるであろうポジションで勝負することを意識しています。この先10年で必要になりそうなポジションを自分で見つけた時が、環境を変えるタイミングです。私が初めてマネージャーに就任した頃は、「プログラマーは一生プログラマーであるべき。マネージャーになるなんて格好悪い」と考えている人が多かったのですが、私は「これからの時代プログラマーをマネジメントするポジションの人は絶対に不足するだろう」と考えたのでマネージャーのキャリアを選びました。伸びていく業界やポジションを見極めて、早めにそこで勝負することで自分の道が拓けると考えています。
山田:
松岡さんの中には、「この業界・ポジションで勝負しよう」と決めて環境を変えるに至る基準があるんですか?
松岡:
基準と言われると難しいものですが、経営者をはじめ人との交流を増やしてみたり、RSSリーダー等を利用して多くの情報を仕入れるなかで多くのサービスに触れ、そのサービスの熱量を感じたときです。Web3においては複数のGameFiに触れ、彼らの提供するDAOにアクセスして初めて感じることができました。
山田:
自己理解が深まったタイミングで、それに合わせた選択を常にしていくと、自然と環境を変えるべきタイミングというのは見えてくると考えています。自分が何に興味があり、何が好きなのかを知るためには、世の中にある様々な概念を広く知っていくことが大切です。例えば、暗号資産に興味があるかないかは、暗号資産を全く知らない人には判断ができませんよね。世界の人々の平均的な「好き」と、自分の「好き」を照らし合わせて、相対的にも絶対的にも好きだと思える道を常に選択していくことが重要だと思います。そうしてキャリアを作っていく中で生じる環境の変化には間違いなく価値があります。
松岡:
山田さんが「自分はこれが好きなんだ」と自覚した瞬間はありますか?
山田:
世の中に現れて間もない技術で世界が変わっていくのが好きです。原体験は、小さい頃にテーマパークで見た”スター・ツアーズ”のような先進的なアトラクションです。今では当然のように受け入れられているオーディオ・アニマトロニクスも、1960年代当時では生き物にしか見えないロボットが動いている、というとんでもない衝撃を与えたのだろうなと思います。そういった「先端技術を価値に変える」という行為に、一消費者としては感動を覚えますし、一経営者としては畏敬の念を抱きます。今の時代の技術を見て、比較的新しく、世界を変えていく可能性があるものはなんだろうと考えたときに、ブロックチェーンはその一つであろうと思いました。それも、コインチェックでのキャリアを選んだ一つの理由ですね。
【後半に続く】
後半では、山田さん・松岡さんの思うコインチェック エンジニア組織の課題と魅力を深掘りします。執行役員として、これからどんな組織やサービスを作っていきたいのか、それぞれの考えを伺いました!