目的なき1on1は無駄である〜交換日記式1on1のすゝめ〜
この記事はコインチェック株式会社(以下、コインチェック)のアドベントカレンダー7日目(シリーズ2)の記事です。
はじめに
こんにちは!Crypto Asset事業本部 / プロジェクトマネジメントG の藍川です。
皆さんのチームでは、効果的な1on1を実施できていますか。
「イマイチ効果が実感できない」、「準備が面倒臭い」、「他の業務に時間を使いたい」など、何かしらの不満を抱いている方もいるのではないでしょうか。
今回はそのような方へ向けて、私の所属チームで採用している 交換日記式1on1 について、実際の運用方法や魅力をご紹介したいと思います!
1on1とは
1on1とは、上司と部下が定期的に行う1対1の対話の場のことです。
その目的は、部下の成長支援、信頼関係の構築、キャリア目標の明確化など、多岐にわたります。単なる業務の進捗報告の場ではない、という点が特徴です。通常、週次や月次など定期的に実施します。
個々に寄り添い、組織全体のパフォーマンスを向上させるために重要な対話の場、それが1on1です。インテル元CEOのアンディ・グローブ氏も、著書『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』の中で、その重要性を説いています。
当然ですが、1on1には明確な目的があるのです。
よくある1on1
多くの場合、以下の流れで行われるかと思います。
部下)実施までに対話したい内容をドキュメントに記載する。
上司&部下)1on1実施!上司は部下の記載内容に対してリアルタイムでフィードバックしながら、対話を行う。
この形式でも有意義な1on1が実現できているのであれば、以降の文章に目を通す必要はありません。
しかし、次に挙げる問題を抱えているケースも少なくない気がします。
1on1で起こりがちな問題
時間が足りなくなる
業務のことのみならず、個人的な目標や悩み事など業務外のことまで、幅広い話題を扱う自由度の高い場だからこそ、話題が発散し 時間が足りない という経験をした方はいらっしゃいませんか。
「また今度話せばいい」なんて思っていても、結局その機会は訪れず、少しの悩みや違和感を抱え続けることになることも。
限られた時間で必要な情報を交換し合うのは、いつでも難しいことなのです。
実施自体が目的化している
「他でもやっているから取り敢えずやってみよう」と実施してはみたものの、いつの間にか惰性的な取り組みとなってしまっていませんか。
週次など定期的に実施するため、1回にかける熱量も自然と下がってしまい、その結果ただの雑談で終わってしまうこともあるかもしれません。時間になったら取り敢えず会話を始める、のような目的のない取り組みとなっては意味がなく、それは業務時間を浪費していることと同じです。
通常よりもリラックスして臨める場とはいえ、プライベートのお喋りの時間では決してないのです。
これらのように、徒に実施する目的のない1on1は、時間の無駄遣いであり、実施しない方が良いとさえ言えるでしょう。
交換日記式1on1のすゝめ
上述の問題から「限られた時間内に目的ある対話を完了させる」という課題を設定した時、どのようなアプローチが考えられるでしょうか。
ここで私がお勧めしたいのが、何を隠そう 交換日記式1on1 なのです。
それでは実際に私の所属チームで運用している方法をご紹介します。※私は部下の側です。
部下)実施の 2日前まで に、予め決められたフォーマットに沿って対話したい内容をドキュメントに記載する。
上司)実施の 1日前まで に、部下の記載内容を確認し、コメントを付ける。
部下)実施まで に、上司のコメントを確認したうえ、当日に特に対話したい内容を準備する。
上司&部下)1on1実施!
部下)振り返りを行い、上司に共有する。
この交換日記式のポイントは、「当日までに双方向のコミュニケーションが完了している」点にあります。
この結果、当日は特に話したい内容に焦点を絞ることができ、限られた時間で密度の高い対話が実現します。また、上司と部下の双方である程度の時間をかけて準備するため、実施自体が目的化することなく、当日の時間を有意義なものにしようというインセンティブが働きます。
ここで、私が特に魅力的だと感じるポイントを2つほどご紹介します。
深い自己理解に繋がる
交換日記式では、上司が事前にフィードバックをコメントするため、通常よりも時間的コストが発生します。部下の視点に立つと、上司に相応の時間を使わせるため、内容の薄いものとならないよう丁寧に準備することを意識するようになります。
その中で、業務やプライベートでの出来事、心理状態などを深く振り返ることになり、この深い振り返りにより、思考が整理されてゆくのです。
ジャーナリング(思考や感情を整理し、自己理解を深めるための記録)も自然とすることになるのが、通常よりも準備に時間をかける交換日記式の良いところだと思います。
資産性の高い記録が残る
通常の1on1は、上司のフィードバックが会話中に行われるため、少なからずその時々の文脈に依存するコメントが記載されます。また、リアルタイムに上司の意図を的確に捉えながらメモをとる行為は、それなりの集中力を要するものであり、リラックスして対話できる1on1本来の良さを失いかねません。
一方で交換日記式の場合、事前に上司からのフィードバックがコメントとしてドキュメントに記載されるため、当日の会話の文脈に依存しづらいものとなります。また、当日は必要なものに限りメモをとればよく、より対話に集中することができます。
後からドキュメントを振り返る時、正確かつ迅速に情報が取り出せるのは、交換日記式の方でしょう。加えて、上司が事前にコメントするため、純粋に情報量としても通常より多くなり、その分価値の高い資産となることでしょう。
実施するための工夫
交換日記式は、通常よりも時間的コストが生じる取り組みです。よって、以下の人には向かないでしょう。
そもそも1on1に価値を感じていない人(インテル元CEOのアンディ・グローブ氏もその重要性を強調しているにも関わらず)
長期の成長よりも、目の前の成果を求める人
週に1時間の時間が取れないほど、何かに追われている人
それでも実施したいという素敵な貴方に向けて、2つの重要なポイントをご紹介します!
各アクションの期日を設定する
非同期のテキストコミュニケーションの良さを享受する交換日記式ですが、それを成立させるためにはどこかでアクションの同期を行う必要があります。
私のチームでは、準備にかかるアクション毎に、その期日を設定して運用しています。
「部下)2日前までに〜 → 上司)1日前までに〜」という準備フローを明確化している。
各アクションに時間をかけ過ぎない
事前準備として、部下の内省、上司のフィードバックコメントなど、通常よりも多くのアクションが発生します。各アクションにかける時間を予め決めておくと良いでしょう。
部下の内省は、30分以内に終わらせる。
上司のコメントは、1分かけて思い付かないものに関してはスルーする。
時間的コストがかかるという難点は、明確なルール設定とその遵守により克服が可能です。そしてこの「実施方法を工夫する」という行為自体が、思考停止から脱し、より良い1on1実現のために何よりも大切なことなのです。
おわりに
今回は私の所属チームで採用している、交換日記式1on1 についてご紹介させていただきました!
今の1on1に満足していない方は、是非導入を検討してみてはいかがでしょうか?