令和の時代、飲み会はもうオワコンなのか?駆け出しPMが1年を振り返って思うこと
この記事はコインチェック株式会社(以下、コインチェック)のアドベントカレンダー24日目(シリーズ1)の記事です。
はじめに
こんにちは。コインチェックでプロジェクトマネージャー(以下、PM)をしているNancyです。
唐突ですが、忘年会シーズンの12月、皆さんは会社の飲み会にどのくらい参加されていますか?
先日たまたま飲み会について触れているアンケートを見つけ、「飲みニケーションは不要」という回答が56.4%を占める、という結果を目にしました。
同アンケートの過去の結果を遡ってみると、飲みニケーション不要派が必要派をやや上回るという状況が、ここ2〜3年続いているようです。
そんな令和の世の飲み会事情はありながら、この記事では「駆け出しのPMがこの1年でどれだけ飲み会に救われたか」という話をさせていただければと思います。
人生初となるPM業務で抱いた、ステークホルダーとのコミュニケーションに対する悩みや不安、それらとどう向き合ったかをお伝えすることで、私と似たような状況、思いを抱いている方が、日々の行動や気持ちを変化させるきっかけの1つになれば嬉しいです。
簡単な自己紹介
私は現在PMとして、暗号資産交換業に関係する法令改正に対応するための、バックエンドシステム改修プロジェクト、ならびに関連するUI/UX改善プロジェクトを担当しています。
コインチェック暦をざっくりご紹介すると、
2017年1月、カスタマーサポート(CS)の部署に入社
約7年間、CS担当の一員として、問い合わせ対応や運用フロー構築/改善、VOC活動(顧客の苦情等を元にしたサービス改善活動)の社内推進やプロダクトUI改善企画などに従事
今年5月、PM組織への部署異動をきっかけに、人生初のPM業務を開始
といった流れで、これまで当社サービスをご利用いただくお客様と比較的近しいところで仕事をしてきました。
未知のPM業務にもがく日々
最初に担当した案件は、「外為法に準拠するための暗号資産入金システム改修プロジェクト」でした。
これは簡単に説明すると、「当社サービスがマネロンや犯罪に使われないよう、暗号資産入金をしっかりモニタリングできるシステムや運用を、法律に則って構築すべし」というものです。
このプロジェクトに臨むにあたり、以下の苦悩がありました。
心理的負荷の面で、特に2の占める割合が大きく、
MTGで必死に議事録を取るものの、知識不足がゆえに議論の内容が1割も理解できない
社内ではテキストコミュニケーション、オンラインMTGが中心で、初めて一緒に仕事をする方々の人となりや雰囲気がつかみづらい
こういった状況から、自分の考えを伝える、質問する、相談するといった、ごくごく当たり前のコミュニケーションさえも、毎回心が締め付けられる思いで行う日々が続いていきます。
直属の上司にかなり手厚くご助力いただいたことや、関係者のハードワークのお陰もあってPJを完了することができましたが、私自身はといえば、PMとして再現性高くパフォーマンスを発揮できる状態とはほど遠く、特にコミュニケーションに対する不安と恐怖の面で、相変わらず解決の糸口を見出せないままでいたのです。
飲み会がもたらした気づきと変化
「Nancyさんは飲み会の時と業務中で全然雰囲気が違いますね。飲み会の時の方が断然良いと思います。」
きっかけは、とある飲み会でエンジニアの方が発した、何気ないこの一言でした。
PMとしてワークしていくために、コミュニケーション領域の悩みを急ぎ解決する必要があると考えていた私は、まず以下の点について要因を探ることから始めました。
考えや思いを巡らせていたとき、先ほどのエンジニアの方の言葉がふと頭に浮かび、試しに業務中と飲み会でどのような状態の差分があるのかを洗い出し、比較してみることにしました。
比較の結果、両者には「コミュニケーションの目的とスタイルに大きな違いがある」ということが分かりました。
前者は、義務感や自分の効用に基づいて行動しているのに対し、後者は、場全体の効用を最大化しようという欲求に基づいて行動している点で異なっています。
PM業務を始めたての暗中模索時期は、PMたるもの「プロジェクトに関わる全ての人モノ事を完璧に把握、コントロールし、ハンドリングしていく必要がある」と考えており、それはさながらスティーブ・ジョブズ氏のような名プレゼンを繰り広げ、会場から拍手喝采をもらえるようなパフォーマンスを常時発揮し続けなければならないというような、ある種の思い込みに囚われていたのだということ、そしてそれが業務中の様々なコミュニケーションの場面で、私の思考や行動を縛っていたパフォーマンスを低下させていたということに気づいたのです。
上記の差分を認識できて以降、「飲み会のNancy」が持っている要素をできる限り業務中にも発現させるため、次のことを意識するよう心がけました。
意識と行動が変わったことで、以下のような変化が生じます。
このような好循環が生まれた結果、いつの間にか議論や相談がしやすい関係性をプロジェクトのステークホルダーと築けるようになっていました。
また、一連の変化の中で、笑いを自ら生み出すMTGの方がそうでないMTGよりも、自身が全体のコミュニケーションをうまくリードできるという再現性に気づけたことも、大きな収穫の1つだったと思っています。
心理的安全性の高いコミュニケーション環境の土壌が整ったあと、議論相談への貢献度合いにも変化が現れ始めました。
私が担当している法令関連の開発案件は、法令遵守とユーザビリティーがトレードオフになる場合が往々にしてあり、主に以下の点について考慮しながら検討を進めていく必要があります。
ここでは、「飲み会のNancy」の行動原則2と3に基づくアプローチが特に役立ちました。
プロジェクト関係者の方から教えていただいた、RFC2119(Request for Comments)をもとに、法令として求められる条件やそれをどうシステム上実現させるかの選択肢について、プロジェクト内の認識を擦り合わせられるよう、質問を繰り返して相互理解に努める。
法務コンプライアンス担当者に対して、提示された条件や要求は本当に法令上MUSTなのか確認し、ユーザビリティーや開発担当者の工数観点でNOと言ったり、代替案を提示する。
一方、開発担当者に対しては、法令上どうしても必要な場合や当社のリスク低減措置としてあるべき機能、ユーザーや社内のオペレーション担当者の利便性に大きく影響する機能については、可能な限り実装をお願いする。
オペレーション担当者からの様々な機能追加、改修要望に対しては、定量的な効果試算を提示いただき、開発者の状況や費用対効果の観点でNOと言ったり、代替案を提示する。
「飲み会のNancy」の行動原則に加えて、CS経験で培ったユーザー視点/オペレーション担当者のペイン、そこに開発担当者のペインが加わり、法令という縛りの中で何がどこまで必要なのかを明確化することで、全体最適なアウトプット創出や意思決定が徐々に増えていき、前述したコミュニケーションの苦悩以外の苦悩1と3についても、自然と軽減されていきました。
再現性のある自分なりのPMスタイル
以上の経験を踏まえて、今後私が目指すべきPMスタイルを「明石家さんま式PM」と名付けることにしました。(笑いを交えて場の最適化に貢献している人物として、私の中で1番イメージにあるのが、明石家さんまさんだったからです)
端的にまとめると、以下の要素を大事にしながら、プロジェクト推進の役割を果たすPMスタイルのことを指します。
また、漫画「ブルーロック」に登場する成功の方程式をお借りすると、以下のように表せます。
飲み会をきっかけに、意識と行動変容を起こせたこと、そして飲み会を通じて関係者とのリレーションを深められたこと、その流れの中で、自分の特性を踏まえた再現性のあるPMスタイルを見出せたことが、この1年を振り返った時の1番のハイライトです。
まだまだ駆け出しの身ですが、明石家さんまさんのように場の楽しさを最大化できるような存在を目指して、引き続きコツコツと問題解決に取り組んでいきたいと思います。
最後に
色々とお伝えしてきましたが、改めて全体を簡潔にまとめるなら、「飲み会の力はすごいので、仕事で悩んだらまずは関係者と飲みに行こう」です。
ただし、お酒の飲み過ぎで体調を崩し欠勤するみたいなことがあっては本末転倒になりかねません。
くれぐれも飲む量と頻度はほどほどに。(自省)
長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました!