見出し画像

尊敬されるプロジェクトマネージャーの7つの共通点

この記事はコインチェック株式会社(以下コインチェック)のアドベントカレンダー23日目(シリーズ2)の記事です。


はじめに


こんにちは。取引所事業部の杉本です。

私は銀行系のSIer企業でキャリアをスタートし、クレジットカード会社、ネット証券会社、暗号資産業の企業を2社、そしてフィンテック事業会社を経て、現在はコインチェックで働いています。

これまでの職務経歴は、プロダクトマネージャーやプロジェクトマネージャー、PMOとしての役割が全体の8割を占め、残りの2割はエンジニアとして働いてきました。

現在は取引所事業部の部長として、プロダクトを主軸におきながら各種マネジメント業務を実施しています。イメージとしては以下の領域です。

これまでの道中、多くの方々と出会い、さまざまな形でともに仕事をしてきました。

その中でも特に尊敬できる方々との出会いは、私の見本となって現在の働き方に大きな影響を与えてくれました。

今回はその尊敬できる方のうち、プロジェクトマネージャーたちを振り返り、彼らに共通するポイントについてお話ししたいと思います。

書くこと


私が尊敬するプロジェクトマネージャーたちに共通するプロジェクトマネジメントを行う上での考え方や心構え、言動などについていくつかご紹介します。

書かないこと


プロダクトマネジメントやプロジェクトマネジメントの方法論、PMBOKなど、本や他の記事でよく紹介されていることは記載しません。

尊敬できるプロジェクトマネージャーの共通点


1.不確実性を上手にハンドリングする

プロジェクトには常に不確実性がつきもので、急な案件の割り込みやインシデント対応、主要メンバーの離脱、本番環境の物理的破損、事業資金の枯渇などの突発なイベントでプロジェクトの道中で非常に苦しめられると思います。

特に規模が大きく、期間が長くかかる大きなプロジェクトほどそのリスクは増大し、先を見据える必要性がでてきます。

これまで私が見てきた尊敬できるプロジェクトマネージャーたちは、将棋のように1手1手を大事にしながら、詰めていく様が非常に上手でした。

具体的な手の打ち方として、以下のようなことを行っていました。

  1. これまでの経験からこれから起こり得る状況を事前に予測する

  2. 自分の知識・経験で足りない部分は適切なステークホルダーに対して事実のヒアリングを重ねる

  3. 物事を最小限に分解して解像度を高め、事柄の本質を捉える

  4. 最小の物事に対してコントロールが可能な範囲まで制限する

  5. 優先順位をつけ、勇気をもって割り切る(スコープを調整する)

  6. 品質、スケジュール、リソースといった要素を天秤にかける

  7. 適切な役割・権限・責任を持つキーパーソンに対して働きかけを行い、6で挙げた3要素の折衝を行う

これらを行うことで事前に可能な限り対処し、不足の事態が起きたとして板挟みになることなく適切に対処していました。

また、一見何の関連性のないプロジェクトやプロセスでも、能動的に得た事実から推測・推定し、正しく理解して洞察的帰納法(観察を通して得た複数の事実を基に、洞察を通して共通点を発見する方法)で法則化を行い、プロジェクトの中で類似の事項を応用化して、再現性を持たせて可能な限りコントロールが可能な方向に持っていき、道筋を明確にします。

これにより、新たにアサインされたプロジェクトでもその法則性を活用して、スムーズに自分のやるべきことを理解し、どんなプロジェクトでもスムーズに推進できるようになります。

言い換えると、いつも「あ、これ◯研ゼ◯でやったところだ!」の状態になっているということです。

2.仕事が早い

仕事の早さというのは、これまでの経験や習熟度による単純な慣れの早さはもちろんあると思います。

しかし、ここでお話するのはそうではなく、私の尊敬する方々はゼロからすべてを作り出すのではなく、既存の資産(いわゆるストック型資料)を再利用することを重視することによる作業の短縮方法が上手いです。

例として、常に資料を作る際は再利用性を意識して作成するため、基本は以前実施したプロジェクトで作成した資料を部分的に再利用することを中心として資料を作成します。

再利用可能な資料を増やしていくことで、一からの資料作成を不要にして、どのような場面でも迅速に調整や折衝を行い、プロジェクトのスピードと品質を両立させています。

この考え方は、大手SIerや成熟した事業会社などでは組織的にテンプレート・ガイドラインが作られており、こういったことを意識せずとも実践できている場合もあるかもしれません。

何もない状態から始めるベンチャー企業や事業会社でも全く初めての領域に手を出す場合では、最初から再利用できる資料がなくこの考え方は非常に役立ちます。

具体的な実施方法としては、以下の手順になります。

  1. フロー型資料を迅速に作成する

  2. その後、それらを再利用可能(フロー型資料よりも汎用的にブラッシュアップ)なストック型資料にまとめ上げる

  3. 最終的にこのストック型資料をプロセスに落とし込み、組織全体の資産として活用する

ここで注目したいのは3番で、いくらストック型資料を作成してもプロセスに落とし込まなければ、再利用されずに陳腐化していくため、3番まで必ず実施するべきだと考えます。

またここに合わせて必須な要素として「情報整理」です。

単純なことのように思いますが、フォルダや資料の管理、会話や情報の整理整頓ができている必要があります。

整理はファイルの位置、リンク、権限が適切に固定されているということも含みます。これはストック型資料の場所がわからなくなったり、見れなくなったりすると意味がないからです。

これらを実施することで情報を自由自在に出し入れすることが実現でき、早く動くための基礎的な仕組みを洗練しているのだと考えています。

3.自分の意思を統一・浸透させるのが上手い

私が知っている尊敬するプロジェクトマネージャーは、自分のドメイン・技術知識・スキルセットを継承することがマネジメントの仕事であると常に意識し、その思想・意識・ルールを資料に記載して、その資料どおりに行えているかを常日頃から言動により矯正しています。

言動というのはメールやslack、1on1、チーム内のミーティング、成果物作成で方向性を示し、意見は可能な限りブレず、意思をもってメンバーに伝えることです。

これにより、自分がいなくても自分が複数人で働いているような環境を作り、自律性が高い組織を構築します。

また、自分の考えやビジョンをチーム全体に浸透させるのが非常に上手です。

何度も適切な場面で同じ思想を繰り返し宣言することや適切なコミュニケーションパスを第一に作成し、定期的にチームメンバーに自分の意思や自分しか知り得ない目標、全体の概況などを共有し、チームメンバーが取り残されず、同じ方向を向いて仕事を進めるようにします。

これにより情報の格差を可能な限り減らし、誰も置いていかれず全員が同じゴールに向かって向かえます。

さらに自分ができていないことを他人に求めても響かないことを理解しているため、まずは自分が手本を示し、具体的な道筋を示して、チームメンバーが迷わないようにサポートします。

4.自分と他人のリソースの重要性を理解した指示が上手い

尊敬できるプロジェクトマネージャーは、レバレッジを効かせ、レジリエンス(復元力)を持たせるために、デリゲーション(権限委譲)が上手です。

プロジェクトが大きくなればなるほど課題・懸案は増大してタスクは増えていきます。

先ほどの章と似通った話となりますが、プロジェクトを引っ張る存在に求められることは自分と同じように考え、それを実行できる人を増やし、どんどん任せて、スキルの底上げを行い、効率と成果を最大化することです。

そのためには人に頼ることを恐れず、適切にチームメンバーへの相談や指示を行う必要があります。

その中でも自分のリソース(時間や労力:単価とも言い換えれます)の価値を理解しており、自分が手を動かすのは最終手段としています。

最終手段と述べた理由としては、プロジェクトで足りない穴を埋めるのはリソースの調整権限・役割・責任を持っているプロジェクトマネージャーであるため、プロダクトオーナーからリソースを調達するか、それを自分で埋めるかする必要があるためです。(実際は十分なリソースを与えられることはそうそうないので手を動かしがちにはなると思います。。。それもPMの醍醐味かもしれません)

プロジェクトマネージャーがいっぱいっぱいになってしまうと、そのプロジェクトの一番のボトルネックになってしまうため、それを防ぎます。

5.心理的安全性の確保が巧み

プロジェクトマネジメントの上手い方はどの方も一緒に働くと気持ちよく働けます。私はその要因としてはやはり心理的安全性が高いためだと考えています。

機嫌が安定していて、ネガティブすぎず、ユーモアを忘れず、人への接し方には最大限配慮して、価値を届けるために最大限やれることはやり、諦めない姿勢でいます。

チームの雰囲気は過度な対立や馴れ合いに陥らず、忖度せずに意見を言い合える適切な緊張感と信頼関係がある環境を作っています。

その中でも、心理的安全性に一番貢献するのは、チームを守ることを最優先に考えることだと思います。

チームメンバーが板挟みにならないよう配慮したり、自分たちのボトルネックとなるブロック要素を除去するためのサポートを指示するだけではなく、一緒に解決することでプレッシャーや批判からチームを守っています。

その結果、プロジェクトマネージャー自身が矢面に立つこともありますが、それを厭わない強いメンタルを持っています。

ただ強いメンタルというのは打たれ強いという意味ではなく、抱え込まず、相談できる人を周りに作り、感情的にならず冷静に落としどころを見つけることに秀でています。

6.「引き出し」が多い

突然ですが、みなさん手元の資料すぐに出せますか?

私は尊敬する方は、規模・ドメインに関してさまざまなプロジェクトを経験していることから、引き出しが多く、多くの意見・知識を持っているように思います。

必要な情報が出てくる引き出しというのは、プロジェクトマネジメントは新しいことの連続になることがほとんどであるため、非常に過去の経験だけでは対処できないことが多く、引き出しを作りためには単純なことですが、ナレッジツールや共有フォルダ、ローカルのフォルダまで情報整理し、すぐに情報を出せることを重視する必要があります。

これができると一例として、以下の事柄ができると考えています。

  • ファクトをすぐに提示し議論を早期に解決することができる

  • 折衝での認識相違を防ぐことができる

  • 新規参入するメンバーへの知識の継承がすぐにできる

  • 過去の検討から漏れ・誤りを確認できる

  • 問い合わせに対する回答の速度・正確性をあげることができる

すぐに情報を出せるというのは、直感的にどのチームメンバーが見ても情報にたどり着くことができるということであるため、単純なことではありません。

情報の抽象化と具体化を繰り返し、構造的に情報設計し、直感的に下位の階層にたどり着ける必要があります。

7.まずはたたき台を示す

「たたき台を作る人は偉い」。これは世界における普遍的な標語です。(と勝手に思ってます)

私が尊敬する方々は、たたき台を率先して作ることが非常に多いです。

何も資料がない状態で意思決定や相談をすると、前提・事前知識・経験・認識・意識がどこにあるのかわからないため、意見の収拾がつかなくなります。

たたき台というのは、わからないことの調査、プロセスを構築、フォーマット作成、構成の検討などを行ったうえで、その空間で初めて作るものであり、議論のベースになります。

たとえその資料の内容が間違っていても、次回のアクションが具体的になり改善方法(向かう先)が意識でき、議論に参加した人は同じ方向を向けます。

こういったことから、たたき台は進んで作るべきというのがある程度熟練のプロジェクトマネージャーは感じ取り率先して実施しているものだと思われます。

まとめ


7つほど尊敬する方々の共通点を挙げましたが、もちろんここに挙げた以外にも尊敬できる点は数多くあります。

私が尊敬できるうちのこの点を挙げた理由は自分が強くそうありたいという点だからだと思います。

私自身、上記に挙げた点は普段意識したい点だと考えています。

人は尊敬できる人(ロールモデル)を見つけて一緒に働き、その影響を受けることで飛躍的に成長できると思っています。

あなたにとっての尊敬できる人をぜひ職場で意識して見つけ、その方の行動を観察してみてください。きっと良い影響があると思います。


コインチェックはエンジニア採用強化中です! ぜひ採用サイトにも遊びに来てくださいね。