CTOの朝のルーティーン
このエントリは、コインチェック株式会社(以下、コインチェック)のアドベントカレンダー22日目(シリーズ1)の記事です。
はじめに
朝一に確認している数字の話をします。
私は、「CTOの仕事とは何か?」、「日々何をやっているのか?」という質問をよく受けます。CTOの仕事は各社によって異なるため、前者の問に正解はないと思います。私自身、CTOという役職が幅広い業務に携わっているため、どこから話を始めればよいか迷うこともあります。
しかしながら後者の問いに対して、自信を持っていることが一つあります。それが数字の確認です。おそらく、多くのCTOの方が同じことをしていると思います。
今回は、私が朝一番にルーチンとしてチェックしている「数字」に焦点を当ててみたいと思います。「この数字も朝一で見たほうがいいよ!」というアドバイスがあれば、ぜひ教えていただけると嬉しいです。
自己紹介
改めまして、コインチェック 常務執行役員 開発・人事本部長の松岡です。管掌部門は開発基盤、セキュリティ、社内システム、人事、カスタマーサポートです。重要な兼務として日本CTO協会代表理事と、株式会社うるる社外取締役と、千代田猟友会に所属してます。以前は2つの会社でCTOを努めたり、自分の会社を経営していました。思い入れのあるOSはFreeBSD2.2.8です。暗号系の技術に血反吐を吐きながら日々生活しています。
朝のルーティーン
私のgoogle calendarには「朝の行事」という繰り返し予定があって、そこに多様なダッシュボード等のリンクが張ってあります。
ダッシュボードの多くはLookerを利用しています。
大きなカテゴリとしては以下のようになっています。
サービスの数字
インフラの数字
特に取引所のインフラ、APIの数字
ビジネス部門の目標に関する数字
ソースコード、開発生産性の数字
管掌部門ごとの数字x5
予算の数字
サービスやインフラの数字はそれぞれ数百のチャートがあります。各部門ごとの数字も、100は超えていると思います。
チャートの数が多く、全部を細かく見ることは無理です。このため予実と大きく異なったり、前日比、前週比、前月比で大きく乖離があるものを細かく見てます。
私は過去にFirefoxのExtensionを入れてTumblrをスポーツのように巡回したり、RSSリーダーで数百数千のブログと戦った動体視力が残っています。ゆえに、ぼんやり見ているけど違和感に気がつく、という能力が開発されています。このためチャート全体のチェックと、わからないことを質問するのに合計30分ぐらいでなんとかなっています。こういう個人技に頼るのはいかがなものかと思いますので、次年度はAI等によるサポートを強めていこうと思ってます。
毎日チェックするべき数字と、週次の数字と月次の数字がありますが、細かいので今回は割愛します。この繰り返し予定には、その他にチェックしているサイトや、承認系SaaSのリンクが散りばめられています。
今回はエンジニアブログですので、見ているソースコードや開発生産性の数字を少しだけ深堀ります。
ソースコード、開発生産性の数字
これが開発生産性の数字である、という強い意志はないです。ざっくり「開発・運用ダッシュボード」という名前で括られ、いろいろな数字を集めています。
一部の数字は、「インフラの数字」と被っています。これはダッシュボードの管理者が、異なる組織のためです。私の考えとして、軽いカニバリはその調整コストよりも安いと考えているため、あまり気にしていません。
全部の項目は掛けないのですが、ざっくりあるものを書いてみます。
FourKeys
トイル数のリードタイム、部門別、人別、期間別
デプロイのリードタイム、部門別、人別、期間別
コード変更量、部門別、人別、期間別
SLO,MTTR,MTBF,インシデント管理表,エラーバジェット
各種APIパフォーマンス、呼出回数(/day)、応答時間(sec)、エラー率、スループット(rps)
テストカバレッジの推移、部門別、人別、期間別
コントローラごと 呼出回数(/day)、全体応答時間(msec)、View応答時間(msec)、エラー率(全体/サーバ/フロント)、スループット(rps)
サーバーエラーの状況、件数、ランキング、期間別
各種コード静的解析のスコア、期間別推移
静的解析スコアの改善に貢献した人のランキング
AWSやGCPの各種コスト
品質関連、バグ報告数、バグのOPEN/CLOSE数、ステータス推移、クローズまでのリードタイム
目検で大変恐縮なのですが、ざっくりと300程度のチャートがありそうです。もっとあったらごめんなさい。項目ももっともっとあると思うのですが、何故か手作業でこれを作り始めてしまったため、網羅性は低い状態にあります。ごめんなさい。
数字を見たうえでどうしてるの?
大きくは2つです。月1の全体会で漫談と、Slackで各担当者に確認をして日々の意思決定に寄与しています。
月1の漫談は、私が全社に対して20分ぐらい話し、部門長が10分話し、質問のある方が残って10分間おかわりをしています。私が話す20分は「会社戦略のおさらい:3分」「事業やソースコードの数字:7分」「漫談:10分」です。ある程度の規模感の会社ですと、「CTOというか経営陣何やっているかわからない問題」があると思います。この問題解決のため、この漫談の時間はかなり大事にしています。
事業やソースコードの数字の中で、CTOとして特に自身が注目し、伸ばしたい数字を取り上げ語っています。お気に入りのチャートは「当月の静的解析を上げるPRを出した人ランキング」です。こちらでは、実際に名前を上げて称賛しています。
何を称賛するかは、とても強いメッセージだと考えていて、これからもチューニングしていきます。
各担当者確認は、それぞれの数字の解像度を高めるために行っています。今の時代の経営陣にもっとも大事なことは解像度です。様々な技術の進化によって、毎年毎年経営陣が同じコストを支払って手に入る解像度は上がり続けています。解像度が高ければ高いほど、意思決定の質は良くなります。経営陣がこれを行うことは競争力の獲得であると認識しています。
意思決定の質は、その判断に寄与する数字の数と数字を獲得するためのリードタイムに強く影響を受けます。数字の数は、シンプルにKPI等の種類の数です。リードタイムはその数字が脳内にある、もしくは1秒で手に入るなど言うことです。ダッシュボード化されている数字が多ければ多いほど、そしてそれを毎日見れば見るほど、私の脳内には数字がプリントされリードタイム短く意思決定に活用できます。
前職において私は「ダッシュボードの数がDXの進捗度合いだ」などと発言していたこともありました。すごく大事なことだと考えていて、継続してモニタする数字を増やし続けたいと思います。
さいごに
今回は私の「朝のルーティーン」として、どのような数字をモニタリングしているのかをお伝えしました。
みなさまのお役に立てれば嬉しく思います。
さいごに、採用の話をしましょう!
最近NASDAQに上場したコインチェックは、積極的に採用を行っております。「上場したから、もう安定してやること無いんでしょ」とお考えのあなた!ぜんぜん違うのです。クリプト業界の不確実性は、相変わらず狂気を帯びています。技術はどんどん進化し、レギュレーターは色々整備を頑張り、マーケットには次々にプロダクトが飛び出しています。
不確実性が高いということは、密度が濃い時間を過ごせるということです。世界に爪痕を残すチャンスが有るということです。リスク許容度の高い人間にとって楽しい場所がここにあります。
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