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出井さんは暗号資産やブロックチェーンをどう見ていたか

昨年6月2日、コインチェックの親会社であるマネックスグループの取締役であった出井伸之さんがご逝去されました。

コインチェックのメンバーにとっては、毎年、年末にマネックスグループが開催するBo-Nen-Kaiで発表される「イデイアワード」を通してお会いする存在でした。亡くなられたあとの数々の報道を目にすると、暗号資産やブロックチェーンを早くからずっと応援してくださっていたとの記述をいくつも見つけることができます。

出井さんが暗号資産やコインチェックをどのように見ていらしたのかを、いま改めて、マネックスグループCEOの松本さんに尋ねてみました。


暗号資産ビジネスに入る時に背中を押してくれたのが出井さんでした


出井さんはブロックチェーンや暗号資産をどのように見ていたのでしょうか。

ブロックチェーンや暗号資産について自ら情報収集して、その重要性を早くから理解し、マネックスが暗号資産ビジネスに入る際に背中を押してくれたのが出井さんでした。

マネックスのボードメンバーで最高齢だけれど、ブロックチェーンという新しい技術を一番理解していて、自分で評価軸を持っていたのが出井さんだと思います。

出井さんはテクノロジーの人で、「テクノロジーがすべてを変えるんだ、テクノロジーで世界がどんどん変わっていくんだ」と常々仰っていました。


出井さんはブロックチェーンや暗号資産を身近に感じていた


コインチェックについてはどのようにご覧になっていたのでしょうか。

出井さんがコインチェックについてネガティブな発言をされるのは一度も聞いたことがないです。グループの役員が集う場で、(コインチェックの創業メンバーである)和田さんや大塚さんと話すのをとてもとても楽しんでいるご様子でした。

マネックスグループBo-Nen-Kaiでのひとこま。左から松本さん、出井さん、コインチェックファウンダー和田(2019年)

出井さんが私に「マネックスをどう変えていくかを考えるのがCEOの仕事だよ」と、半分怒っているような感じで仰ったのが2016年。

そこから「マネックスゼロ」の取り組みを始めて、次の変化の鍵のひとつとして抽出したのがブロックチェーンでした。2017年春頃からブロックチェーン領域で幾つかの会社の名前が聞こえ始めてきた時には、これは自分たちが遅れてしまったかも知れないという焦りが生じました。

まもなくして、2017年10月にマネックスが「第二の創業」を掲げた時には、マネックスのなかにブロックチェーンを取り込んで、暗号資産交換所も取り込んで、いずれ自分たち独自のパブリックチェーンをつくるとも言いました。出井さんは「マネックスゼロ」の取り組みに常にサポーティブでいてくださいました。

出井さんはブロックチェーンをトラスティドネットワークと捉えていて、理解をするのがものすごく早かった。ブロックチェーンや暗号資産を身近に感じていて、やったほうがいいよと仰っていました。

「第二の創業」を掲げた3ヶ月後にコインチェックの事故が起きて、その1ヶ月後にマネックスとコインチェックとのコミュニケーションが始まりました。そこから丸2ヶ月でコインチェックのM&Aを決定するまでに、臨時取締役会を正式なものだけでも4回くらい開いたと思います。そのすべての回に出井さんは出席してくれました。

コインチェックを通じてクリプト領域に参入することについては、ボードメンバー皆がサポートしてくれていましたが、いちばん地に足がついていたのが出井さんでした。

出井さんは「新しいもの好き」というと軽く聞こえてしまいますが、新しいことに入っていくことに対してそうしなければならないという意志が強い人だと思います。

新しいことに入っていくことのリスクに向き合うときに、このあたりは言葉にするのが少し難しいのですが、怖くないのだと思います。やることのリスクよりも、やらないことのリスクの方を意識している方のように思います。


いま出井さんがいらしたら「何も新しいことをやっていないじゃないか」と言っていそう


クリプトの世界はとにかく変化のスピードが速く、暗号資産取引所ビジネスも常に新たな挑戦をしないといけないと常々感じています。出井さんから私たちが得るべき示唆はどのようなものがあるでしょうか。

いま出井さんがいらしたら、生成AIの話題にも関心を示していそうですが、それでもなお、ブロックチェーンは引き続き重く見続けていると思う。なんとなくそういう気がします。

出井さんがブロックチェーンなどの技術に勘所を持たれていて、それが揺るぎないのはなぜかを考えてみると、とにかくインプットしている情報量が半端ではないことと、例えば年齢などを問わず、どんな人にも広く接して関心を持って話に耳を傾ける。ストライクゾーンがないというかボールゾーンがない。私から見ていても怖いくらい誰とでも付き合う。その広さがすごいです。その姿勢が出井さんをつくっているのだと思います。

出井さんは、自分の会社にクオンタムリープ(量子力学の言葉で「非連続な飛躍」)という名前を付けるような人で、のんびりしていて変化がないと怒り出しちゃうような方です。取締役会の席で、私に対して、ちゃんと変わって行かなきゃだめだ!と迫られたこともあります。

そうですね、いま出井さんがいらしたら、「何も新しいことをやっていないじゃないか」「新たなものを生み出せていない」と言っていそうな感じがします。出井さんは、怖さよりも変化を選ぶ人なので。

コインチェックのオンライン株主総会支援サービス Sharely(シェアリー)は2020年のイデイアワードを受賞。出井さんはコインチェックの新しいチャレンジにもエールを送ってくださいました。

(聞き手はコインチェック マーケティング部 岡田が務めました。この取材は2023年5月15日に行いました。)


出井さんの言葉には、こちらでも触れることができます。

2018年に公開された出井さんと松本さんの対談です。

松本さんはインターネットで日本の金融業界を変革したけれど、ブロックチェーンはその比ではない革命を起こす可能性がありますよね。

マネックスグループ20周年(2018年)のIDEI × MATSUMOTO 特別対談
https://www.monexgroup.jp/jp/company/chronicle/20th/talk.html


松本さんが毎営業日更新している「松本大のつぶやき」の2022年8月18日の回でも、出井さんが暗号資産やブロックチェーンをどう見ていらしたかに触れています。

私とマネックスをWeb3の世界にいち早く推し進めた原動力は、出井さんの考えと言葉と、そして後ろに引かないで私をプッシュした姿勢だったのです。

「松本大のつぶやき」2022年8月18日発信「出井さんの思い出⑦」

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