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勝手に成果を出し続けてしまうスクラムチームの作り方


「あなたのチームでは、望み通りの成果を出すことができていますか?」

「チームの成長を日々実感することができていますか?」

「形だけのスクラムになっていませんか?」

上記の質問をみて、「うっ」と思い当たる節がある方には朗報です。

このnoteを元に自チームの「スプリントレトロスペクティブ」を見直すことで、プロのオーケストラ集団のように各自が自分のパートを完璧に演奏し、全体が調和して美しい音楽を奏でるようなスクラムチームを作り上げることができるでしょう。

初めまして、コインチェック株式会社の林和正です。
私は取引所事業部のフロントエンドチームでプロダクトオーナー、販売所事業部の3チームでスクラムマスターとして活動しています。
今回は、成果(アウトカム)を出し続けるチームを作る際に最も重要となるイベント「スプリントレトロスペクティブ」について経験主義的知見をお伝えします。

そもそもなぜアジャイルなのか

「なんでアジャイルがいいの?」

あなたはチームメイトからこの質問をされた時、どのように返答しますか?
この問いはスクラムマスターをやっていると必ず質問される核心に迫った質問ですが、これにズバッと回答できるかどうかでチームメイトのモチベーションは大きく変わることでしょう。

私なら「顧客の要望が急速に変化する現代社会において、機敏な価値提供のみが唯一正しい答えを導ける姿だから」と回答します。

私たちが何年もかけてアンケート調査やインタビュー調査を行い計画及び開発をしても、顧客に提供した際に使ってもらえなければ価値を産んだことにはなりません。
そのため、最小限の価値を満たすプロトタイプ及びMVPを迅速に作り続け、ユーザーが抱える問題が何か、それを解決できるプロダクトが作れているか知る必要があるのです。

「アジャイルである必要性はわかったけど、なんでスクラムなの?」

この質問に対する私の回答は、「別にこだわりはないけど、アジャイルフレームワークの中で一番組織の在り方に重きを置いている気がするから」です。
スクラムとは、組織がアジャイルになるためのフレームワークにすぎません。
組織がアジャイルになり、アウトカムを出すことができるのであれば、他のアジャイルフレームワーク(カンバン、XP、リーン等)でも良いのです。

しかし、私は金銭的にチームを維持することが可能な中小企業以上の規模の組織においてはスクラムがベストなフレームワークだと思っています。
なぜなら、スクラムはチームをアジャイルにするために必要最小限の価値観、役割、イベント、成果物を網羅しており、他のフレームワークに比べて組織の成長に重きを置いているためです。

特に、本noteで解説するレトロスペクティブは何を作ったかではなく、それを作るためにチームがどのように協力したか、どのように作業したかを振り返るため、スクラムイベントの中でも特にチームとしての成長を促します。
効果的なレトロスペクティブはチームを指数関数的に成長させ、アウトカムという名の最高の果実を実らせることでしょう。

レトロスペクティブで重要なこと

さて、ようやく本題です。
私がプロダクトオーナー及びスクラムマスターとして多くのレトロスペクティブに参加してわかった、チームを自立組織化するために必要な要素を7つをお伝えします。

1. チームの成熟度に応じてスクラムマスターの在り方を変化させる
スクラムマスターはチームの成長をタックマンモデルに合わせて、立ち回りを変化させることが重要です。
基本的には、チームが成熟するほど、スクラムマスターの発言量は減少していき、チームメンバーが自律的に障害と立ち向かうことを陰で支えるようになります。
形成期では、チームのティーチャーとして、知見の伝授を行います。知見を伝授する際は表面的なHOWの話だけでなく、WHYの話も行い常にスクラムの目的を理解してもらえるよう心がけましょう。
混乱期では、チームのファシリーターとして、イベントの司会や空気感のコントロールを行います。チーム内で衝突が見られる時期であり、ネガティブな会話がしばしば行われますが、その際は会話の焦点をその会話によって未来がどう変化するのかに着目するように誘導しましょう。
統一期では、チームのコーチとして、ルールの厳守化によって生まれている価値を可視化します。形成期からチームがどう変化し、どのようなアウトカムが生み出せているかを振り返ると良いでしょう。
機能期では、チームのアドバイザーとして、余計な手出しはせずにチームを見守ります。「勇者ヒンメル
ならそうした」のようなモデリングがチーム内で行われている段階です。スクラムマスターとして、正しい振る舞いを心がけるだけで十分です。
散会期はありません。スクラムは終わりのない「旅」です。

引用:タックマンモデルとは?チームの成長5段階と活用方法を紹介

2. 参加者の役割を明確にする
スクラムガイドに定義されているスクラムにおける役割は、プロダクトオーナー、開発者、スクラムマスターの3種類しかありません。
そのため、チームを良くするには各役割を明確にし、守ってもらう必要があります。
古典的な開発手法に馴染みのある開発者の場合、自身の役割は開発だけだと思いがちですが、全ての役割がアウトカムを継続的に産みだすためにチームを改善する責任を持ちます。
このことを明示的に伝えなければ、レトロスペクティブにおける貢献度はプロダクトオーナー、スクラムマスターに偏ってしまうことでしょう。

3. 発言に責任を持たせる
各発言者の発言内容及び発言量を可視化することが重要です。
可視化できていない場合は、残念ながらフリーライダーが生まれてしまうでしょう。
しかし、フリーライダーを責めるのは筋違いで、可視化できていない仕組みを変えましょう。
そのため、レトロを行う際は個人名をグルーピングの一軸として空間を設けることをお勧めします。

4.司会進行の役割をデリゲーションする
スクラムマスターはファシリテーターとしての役割を持ちますが、ファシリテーター=司会ではありません。
ファシリテーターは議論が正しく行われるかに責任を持ち、司会進行自体は他者にデリゲーションして問題ないと私は考えています。
司会進行をするには、スクラムへの理解とレトロスペクティブにおける当事者意識がなければできません。

5. ネクストアクションを定める
レトロスペクティブでは、議論が発散しやすいです。
ネクストアクションに繋がらない振り返りは意味がないと言っても過言ではありません。
また、チームの改善はプロダクトオーナーやスクラムマスターが担当する流れになりがちですが、開発者にも割り振りましょう。
そうすることで、開発者がスクラムチームに対して当事者意識を持てるようになっていく光景を私は見てきました。

6. チームの成長を振り返る
これが最も重要なことかもしれません。
チームの成長を振り返ることで、自分たちが行なっていることの妥当性を理解し、確固たる自信につながります。
レトロスペクティブの最初に前回のレトロスペクティブを振り返ると、チームの士気が上がるでしょう。

7. マンネリ化を避ける
チームが成熟するほど、マンネリ化は起きやすくなり、マンネリ化はチームの成長を妨げます。
そのために、必ず話し合わなければならないこと以外は様々な振り返りのフレームワークを用いると良いでしょう。
また、チームに新たな風を吹かせるために、別チームのメンバーを招待してみても良いかもしれません。
思考の枠組みを取り払い、場所、姿勢、タイムボックス、言語などを変えても面白そうですね。
ふりかえりエバンジェリストの森一樹さんが公開されているふりかえりカタログを置いておきます。

自己組織化するレトロスペクティブのテンプレート

この章では、アウトカムを出し続ける自己組織化したチームを作るための振り返り項目を紹介します。
ここで紹介する項目は非常にパワフルですが、より効果的なレトロスペクティブにするには、各項目の目的及び重要性がチーム内で共有された状態を作る必要があります。
そのためにできることは2つあります。
1つ目は、目的及び重要性を各項目の最初に伝えることです。簡単にできるため、必ず行いましょう。
2つ目は、チーム内で問題が起きるのを待つことです。各項目は振り返ることで特定の問題を検査・適応することができます。そのため、あえてその振り返りを行わず、問題が起こるのを待ち、最も効果的なタイミングで提案するのです。

1. 終わらなかったスプリントバックログアイテムの振り返り
目的は、スプリントプランニングで終わると想定していたことができなかった原因を深掘り、今後同じ理由で失敗しないようにダブル・ループ学習を行うことです。

決して、終わらなかったことを責めてはいけません。

2. 各スプリントバックログアイテムの見積もりが正しかったかの振り返り
目的は、見積もりの精度を向上させることです。

見積もりの精度が悪いとスプリントプランニングの価値が下がり、レトロスペクティブの振り返り濃度が下がります。
ストーリーポイント定規をチームで作成している場合は、更新するところまで行えると良いでしょう。

3. 各種レポートの振り返り
目的は、チームの状態を定量的に振り返ることです。

バーンアップチャートでは、スプリント中にスプリントバックログアイテムが追加されて、スプリントゴールの達成を妨げていないかを確認します。追加された場合は、ベロシティを超過してしまうため、既存のアイテムと入れ替えを行う必要があります。いつ追加するのか、いつ入れ替えを行うのかをチームのルールとして定めると良いでしょう。
バーンダウンチャートでは、スプリント中にスプリントバックログアイテムが順調に消化できているかを確認します。停滞している期間があれば、原因を深掘り、再発しないようにダブル・ループ学習を行いましょう。
ベロシティレポートでは、スプリント期間におけるチームの作業量を確認します。過去のベロシティと比較したり、次のスプリントプランニングで積むスプリントバックログアイテムの総量を把握します。
ベロシティが一時的に低くなっても、スプリントゴールを達成できていれば問題はありません。

4. 完成の定義、準備完了の定義の見直し
目的は、チーム内の問題を既存の仕組みで解決することです。

スクラムは、あらゆる問題を解決する手段を兼ね備えています。
問題を解決するために、新しいドキュメントやルールを作成するのではなく、既存のルールを更新することで解決することがシンプルなチームに保つ秘訣です。

5. ネクストアクションの設定
目的は、振り返りの内容を次に繋げることです。

ネクストアクションに繋がらない振り返りは意味がないと言っても過言ではありません。(大事なことなので2回言いました)

6.【最重要】前回のレトロスペクティブの内容を振り返る
目的は、チームの成長を実感することです。

スクラムはイベントが多く、時間を無駄にしていると感じてしまうメンバーが必ず出てきます。
これは、その時間がどのような価値を生み出しているかに気づけていないためであると断言できます。
仮にどれだけ時間を使おうが、価値ある時間であれば納得するはずです。

最後に(本noteのレトロスペクティブ)

ここまで読んでいただきありがとうございました。
せっかくここまで読んでいただいたのであれば、これから何をするのかネクストアクションを1分で定めてから、このnoteを閉じてください。
面倒なその1分があなたのチームにとって、最高の果実に繋がりますように。

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